父がうらやましいわたし

私の父は、60代後半だっただろうか。父は見た目が若い。服装が若いわけではない。動きも機敏でもない。体型だってビールっ腹そのものだ。何がそう思わせてくれるのだろうか。そうだ、肌が若いのだ。

ラントゥルース

私が小学校高学年くらいの時、父が40歳位、あの時にはすでに父は肌の事を考えていた。田舎の小さな床屋に月に一度位通っていたが、そこで1回1000円のフェイシャルエステを毎回受けていた。肌がつるつるになったと満足気に帰ってきては、私にその床屋のフェイシャルエステを勧めてきた。今では抵抗ないかもしれないが、その時代に、男がしかも、40過ぎのおやじがエステなんてと、私や家族は馬鹿にしていたものだ。

そんな親父の最近のお気に入りは温泉水。近くにある名湯のお湯を汲んできては、スプレーボトルに入れ替え、顔や体に化粧水のように塗りたぐっている。父は曰く、透明感が出てきて、肌がツルツルするらしい。

その成果が出て、通っている病院の若い看護師さんに、肌が綺麗ですねと褒められたと喜んでいる。

現在私は36歳。子供が産まれてからというもの、肌のケアはサボりがちだ。シミだってほくろだって、たまにしか見ないが鏡を見るたびに増えている気がする。今からでも間に合うだろうか。父のツルツルの肌を見るたびに、うらやましく思う。今度会ったら言ってみよう。温泉水を私にも試させてと。